耳に入るのは陽気なクリスマスキャロル…目に映るのは目が眩みそうな程キラキラしいイルミネーション。
街を歩けば息が詰まりそうな程の人混み。
皆が皆この異国の行事を無条件に受け入れているという事実。
少し前なら自分もはしゃいでいる群衆の中にいたはずなのに。
今の俺の心には何も響いてこない。
Lei nell'il memoria cambiare
高校を卒業して普通の大学に通うようになって高校時代が如何にトクベツであったかを知った。
夢だけに全ての情熱を傾けていられたあの夏の日はもう取り戻せないのだと気づくと途端にソレが価値を帯びてくる。
そういうものだ、と諦める術を知る俺は大学生になって野球をやめた。
そんなことよりも生きるためにはイロイロ必要だったから。と言い訳を垂れて自分を納得させたところで虚しさは隠せない。
心を誤魔化すことに慣れたからと言って得る物は何もないのだから。
「島崎君、24日空いてる?」
同じゼミの子が不意に声を掛けてきたことで俺は初めて、もうそんな季節になること知った。
キリストの降誕祭。
高校がミッション系だったから成立やら歴史には刷り込み学習の賜からかよく覚えている。
全世界の全人口で唯一、ケガレナキ処女マリアが神の子イエスを生んだ日だ。
罪を持たないマリアから生まれた贖罪の子。
生まれながらそんな理不尽なことを押しつけられるなんてご愁傷様、
位にしか思えないこのイベントだが、俺にはもう一つの意味も含まれている。
多分そっちの方がよっぽど重要で、一生消えない俺の原罪でもある。
丁度二年前の同じ季節。
俺は準太と付き合っていた。
今思えば、らしくないつき合いだったと思う。
お互いのことを気にするあまりにお互いを傷つけ合ってきた。そんな恋はしたことがなかったから。
普通のレンアイじゃなかったけど、普通のコトがしたかった。
それは子供っぽさと言うよりもむしろ何かを崇拝する宗教心に近い物があったと思う。
-何が正常で、何が異端なのか-
俺たちは答えすら見つけられずに2年前の同じ日に別れることを決意した。
涙を流す準太に声すら掛けずに走り去ったあのクリスマスイヴ。
あの日以来、俺は原罪を抱えたまま神と目を合わすことをやめた。
ただ目に映るのは、あの日と同じ、変わらない記憶の中の君の泣き顔だけだった。
12/24
誰からの誘いも断って俺はキラキラした街を一人で歩いていた。
両手一杯になったピンクのビラを誰のかも知らない自転車のカゴに詰め込んでやると空いた手がポケットからタバコを探し当てる。
シルバーのジッポーがささやかな灯りを点しタバコに火を注ぐ。
紫煙が鼻孔をくすぐる感じにようやく俺は落ち着きを取り戻した。
俺は何処へ向かっているのだろうか?
行く当てさえないはずなのに俺の足は明確な目的地を持って進んでいく。
電車の切符を買うところで漸く俺は目的地を悟った。
2年前のあの日を繰り返そうとしていることに俺は苦笑を禁じ得なかった。
通い慣れた学校にほど近い公園。
想い出…というよりも生々しい記憶が残されたその場に行くのは抵抗があった。
それでも進んでいく足に俺は躊躇いと自嘲を込めて叱咤するのだった。
公園には街灯以外の灯りは点されていない。
大きなもみの木が有る割には慎ましいクリスマスの様子に何故か心が落ち着いた。
いつも座っていたベンチの前まで行くとそこはあの日のまま変わらない姿があった。
見慣れていたはずなのにひどく新鮮な気がする。
ベンチの上の先客はこっちを振り返って目を見開いていた。
そして恐る恐る掛けられた声…。
「…慎吾さん。」
止まっていた時がまた動き出す。
その声に堰を切ったかのように俺は準太を抱きしめていた。
穢れなきマリアに罪を贖わなければならない。
ただ…そんなことを考える余裕もなくただただ抱きしめる。
贖罪の山羊は聖母の元で全ての色彩を得るかのようだった。
クリスマスイヴ
今、贖罪の子が生まれた。
fin.
アトガキという名の…。
クリスマスアップはアップなんですけど…久々に書いたからか、妄想が熟成されすぎたのか
意味の分からない話で申し訳ないです。
アンダーグラフの「遠き日」って曲のイメージなんですけど
本当はそのまんまアルツ話か記憶喪失、あるいは亡霊ネタにしようと思ってたんですが
あまりの暗さに自分でも喀血ものです。
捏造ヒャク%。話の展開がアリエネェ。準太デテコネェ。
本当に、本当にお粗末さまでした。
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